コラム:干す

(2018年8月21日)

干し野菜とは野菜の干し物。魚と違って塩はしないが、水分を飛ばすことで保存性を高めた先人の知恵が、そこにある。

戦後十年以上経って一般家庭にも冷蔵庫が普及したが、それ以前は栄養価の高い野菜の保存法に知恵をしぼっていた。旬の時期に収穫された安価でおいしい野菜たちは、塩漬けやぬか漬け、干し野菜にされることで、豊かな滋味を長期間楽しませてくれていた。

なかでも干し野菜の仕組みは、とても単純。水分を多く含む野菜は、干すことで栄養とうまみが凝縮する。水分が抜けるとカサが減るぶん、たくさん食べられる。

たとえば干し野菜の代表である「切干大根」のカラカラに乾いたものは、生の大根に比べ栄養価がグッと高まる。カルシウムで比較すると、驚くことにシシャモをも上回る含有量がある。生の大根と比べても10倍以上。食物繊維、ビタミンB1、B2なども10倍以上で、より効率よく摂取できる。

家庭のベランダで完全乾燥させるのは手間がかかる。しかし1㎝ほどの輪切り大根でも、1日天日で半生程度に干しただけで、数段甘みが増す。大根の煮物は、とにかく味がしみにくいものだが、この半生干しなら煮込み時間も短く、味もしみやすい。

半生干しは、水で戻す必要もなく、葉ものやりんご、きゅうりなど、意外なものがおいしくいただける。これも先人の楽しんだ味なのだろう。

 

※天日干しは、季節や気温で干し具合に差が。保存するときは、密閉容器で冷蔵庫に。

※料理は、だしじょうゆでサッと煮るだけで野菜のうまみがひき立つ。