コラム:揚げる

(2018年8月10日)

天ぷらは江戸時代中期に屋台で始まったものだとか。当時のものは、江戸前で取れたエビやアナゴを串に刺し衣をつけて、香り高いごま油で揚げていた。

そのころは魚介類を揚げたものが天ぷらで、野菜は「精進揚げ」と呼んだそう。

江戸の人気は、濃いごま油の天ぷら。一方関西では、あっさりした綿実油を使い、衣もまたサラリと薄めだったらしい。いまでこそ、この東西のスタイルはまじわっているが、野菜の淡い風味を活かすには西のあっさり綿実油のほうが合うと説かれるのが、天ぷら「さわき」の主人の西尾氏。

この店の名物となっているのが、高さ10cmもある大きなさつまいもの天ぷら。40分以上かけ、じっくりと揚げる名人技だ。野菜の天ぷらをおいしく揚げるには、次の3つのことが重要とのこと。

①粉は冷水でかきまぜない

②野菜に粉をはたき衣は薄く

③火が通る前に上げる

西尾氏いわく、難しいのは大きなさつまいもではなく、薄い葉物を風味を活かしてあげることのほうだとか。

野菜は水分が多い。天ぷらは、薄い衣のなかでも100度を超えることはなく、風味を閉じ込めておだやかに蒸される。

たとえば野趣のある山菜なども、ぜんまい、山うどなどアクの強いものを除くと、天ぷらの場合はアク抜きしない。高温の油の中で、すぐアクが出てしまうとか。

 

上質な植物油を使った「精進揚げ」は、野菜の風味と栄養価を包む、日本の誇るすぐれた調理法といえる。