麦+とろろ
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満腹感があり腸もきれいになる美人食
食物繊維 +マンナン
平安時代、〝美人〟の誉れ高かった歌人の小野小町。今でも美少女のことを、〝評判の小町娘〟なんて言ってますね。あの小野小町の美しさの源泉が、実はおかゆと山芋の食べ合わせだった―と言われたら驚かれますか?
僧空海の作ではないかと言われている『玉造物語』にかかれている実話です。それによると、小野小町は山芋入りの麦のおかゆを好んで食べたことがあります。消化がよく、栄養のバランスも万全で、なるほどさすが小町さん、美容と健康には充分に気を配っていたのでしょう。
もっとも、当時、山芋はかなりの高級食だったようで、歌の道で高収入を稼いでいた(?)小町ならではというところ。今でこそ山芋も畑で栽培されていますが、その頃は山野に自生する自然薯(じねんじょ)だけ。自然薯は多年生植物で成長が遅く、食べ頃になるまでに年数を要する貴重なスタミナ食だけに、高価になるのもやむを得なかったことでしょう。
今日栽培されているものは長芋といって、自然薯と区別しています。長芋も、地形によって変種、変形したものをつくね芋、手の形のようなものをやまと芋、扇の面のようになったのを地紙芋、その小さいものをいちょう芋などと呼んでいますが、風味は自然薯にかないません。
山芋は、とろろや千切りをはじめ、煮たり蒸したり、そば切りやかまぼこにも利用されますが、消化吸収の早さではなんと言ってもとろろが一番です。中国の薬学書の古典『神農本草経』にも、「内臓の傷をいやし、病人の気を養う」とかかれています。
とろろの最大の効力はあのヌルヌル。これは糖とタンパク質が結合した物質でできています。
食物繊維は水に溶けるものと溶けないものがありますが、とろろのヌルヌル成分は水に溶けるほうで、水分と一緒にとると胃の中でふくらんで満腹感を覚え、減食効果がでて〝痩身美容〟にもぴったり。とろろのヌルヌル成分には生活習慣病を予防する働きもあり、血液中のコレステロール値を下げ、糖分の吸収を抑制してくれます。
一方、麦のおかゆのほうには、水に溶けないタイプの食物繊維がいっぱい含まれています。この水に溶けないほうの繊維が便通を整え、腸内の悪い細菌をからめとって排出し減らす作用があり、山芋との組み合わせで最高の美容食となるわけです。
欲を言えば、この食べ合わせにさらに生のマグロを加えてみましょう。これで必須アミノ酸が補えます。ほうれん草のおひたしなど緑黄色野菜を加えれば、ビタミン、ミネラル類も万全になります。
〝麦とろ〟の専門店が繁盛しているのも、こうした麦ご飯や山芋の栄養学上のメリットが見直されている証拠でしょう。〝麦とろ〟のセットコースには必ずマグロのお刺身や緑黄色野菜がつけ合わせされているのもうなずけます。
大きなお椀にこんもりと盛られた麦ご飯。おろしたての山芋とマグロのブツ切り・・・・・。少々多すぎるかな?と思われるご飯も、山芋のなめらかな舌ざわりに助けられて、あっという間に平らげてしまいます。できれば一日に1回、とりたい食べ合わせです。
出典:体にいいつもりが逆効果!やってはいけない「食べ合わせ」
著者: 栄養学博士 白鳥早奈英
発行者:青春出版社