コラム:蒸す

(2018年7月31日)

せいろのふたを上げると、湯気のなかで野菜たちがホクホクと笑っているように見えた。

せいろひとつさえあれば、どんな野菜でもおいしく調理できる。

蒸気によってやさしく均一に加熱されることで、甘みや香りがいっそう引き立つ。味付けも自由。世界各地の塩を試すのもいい。かんきつ類をしぼって手作りポン酢、オリーブオイルとバルサミコ酢、にんにくのアンチョビのバーニャカウダー、どれも蒸し野菜にぴったり。

蒸すだけの単純な料理だが、そこには体においしい裏打ちがある。現代人は、食材の味や栄養をできるだけ損なわずに食べたいと願っている。この目に見えにくい栄養を無駄なく体に取り込める調理法のひとつが「蒸す」といえるだろう。

たとえばほうれん草の旬は冬だが、冬場のものは夏に採れるものの3倍のビタミンCを含んでいるそうだ。

そして、そのビタミンCは、調理法によっても摂取できる量に差が出てくる。

ビタミンC、B1、カリウムのように水に溶けやすい栄養素はゆでるより蒸したほうが損失が少なくてすむ。具体的には「炒める:マイナス15%、蒸す:同25%、ゆでる:同40%」の調査結果もある。

油を使わないためカロリーを抑えられ、栄養素も逃げにくい。この調理法には、目に見えない説得力があるようだ。